闘神伝記外伝 ~闘神のつぶやき~ 5
2006.05.18 |Category …片隅の小説
ようこそ……すみません、こんな格好で。
こうして気力を集中しないと、魔界の邪悪な力に対抗できないんです。魔界の者たちが扉をこじ開けようとするたび、魂が酷く軋んで痛むので……時を重ねるにつれて私の魂は、この攻撃に耐えられなくなってきたようです。痛みを堪え切れず、屈み込んでしまうことが多くなりました。情けないですけど……
魂の封印というものは、普通それほど長くもちません。魔界からの圧力に耐えられず、魂に亀裂が生じて引き裂かれてしまうのです。
私も、そろそろ危うい時期にさしかかっているのかもしれませんね。
少しでも長く、門を封じていたいものですが……
ああ……ちょっと楽になってきました、そろそろ諦めたかな?
双剣術継承者の誇りにかけて、そう簡単に門を開かせるわけにはいきませんからね。
こうして気力を集中しないと、魔界の邪悪な力に対抗できないんです。魔界の者たちが扉をこじ開けようとするたび、魂が酷く軋んで痛むので……時を重ねるにつれて私の魂は、この攻撃に耐えられなくなってきたようです。痛みを堪え切れず、屈み込んでしまうことが多くなりました。情けないですけど……
魂の封印というものは、普通それほど長くもちません。魔界からの圧力に耐えられず、魂に亀裂が生じて引き裂かれてしまうのです。
私も、そろそろ危うい時期にさしかかっているのかもしれませんね。
少しでも長く、門を封じていたいものですが……
ああ……ちょっと楽になってきました、そろそろ諦めたかな?
双剣術継承者の誇りにかけて、そう簡単に門を開かせるわけにはいきませんからね。
▽一応続いてますぜ。
・第五話「新兵の通過儀礼」
大陸随一の大国サンテルマインは、とても広い領土を持っています。ナロフから三日も歩けばサンテルマインの領地に入るのですが、城下町に着くまでにさらに二日費やしますからね。
少し、サンテルマイン王国の歴史についてお話します。
当時の国王ファデュス・オリエッティ・サンテルマイン七世をはじめとした歴代の国王は、殊更に領土を広くしようとしたことはありませんでした。街の安全や発展を思う町長たちが、サンテルマインの強固な国力の傘下に組し、その領土に吸収されることを望んだ結果と言われています。
隣の大陸の軍事大国、ゼラン帝国は世界統一を目標として掲げ、破竹の勢いで大陸統一を果たした後、その目標の矛先をサンテルマインに向けました。ゼランの動きを注意深く見守っていたサンテルマインは、その勢いに合わせて自軍の増強を余儀なくされたのです。
かつてはサンテルマイン軍の兵士が城下町や領土の治安維持に当たっていたのですが、ゼランとの戦によって警備が手薄になり、自国の治安が保てなくなることを案じた当時の国王、サンテルマイン四世が、サンテルマイン衛兵隊を新設するよう命じたのでした。
サンテルマイン王国創立とともに誕生したサンテルマイン軍ほどではありませんが、サンテルマイン衛兵隊も数百年の長き歴史を持っているのです。軍よりも厳しい入隊基準によって選抜される衛兵隊員は、街の治安維持だけでなく、必要とあらば軍と同じく前線で戦うことができる、優れた人員によって構成されているのです。
と、いうわけですので……
サンテルマイン衛兵隊に所属になるということは名誉あること。
私は名誉に興味はありませんでしたが、大陸全土の平和に貢献することができる機会を得たことが、何より嬉しかったのです。そこに行くことで私はさらに己を高めることができますし、また双剣術を再び陽のあたる場所で活躍させることができるのですから。
その一方で、それが殺戮の剣であるということを、戦地で実際に試したいという黒々とした思いも少し、持っていましたが……それは内緒です。
私が無試験でサンテルマイン衛兵隊に所属になることを、よく思わぬ方々がいるのは当然のことでした。厳しい試験を潜り抜けた猛者たちにとっては、私はさぞ面白くない存在だったでしょう。双剣術者ということが、それに尚更拍車をかけることは目に見えていました。
だからこそ、私は双剣術を含めた「自分」というものを、惜しげなく披露する義務があると思ったのです。私がどこの馬の骨だか分からないから腹が立つのですから、私がどういう力を持った馬の骨かを知らしめる必要がある、ということですね。
城門のところで私に襲い掛かった連中には、もう少し丁寧に双剣術というものを体験して頂きたかったのですが、ハザムさんを守るのが先決でしたから、その場は手早く片付けるしかありませんでした。
いえ、決してハザムさんが邪魔だったというわけでは……ないのですよ。はい。
クリオ・ノーラン第三中隊長補佐官はそんな衛兵隊の中で、何の偏見も固定観念も持たずに私と接してくれた最初の方でした。栗色の短髪で小柄な方でしたが、全身を鎧のように覆う強靭な筋肉には脱帽させられましたね。筋力を強化する訓練をするのが日課、というか趣味だったそうで、あの小柄な体でも、ワイルダー・パッセ第二中隊長補佐官と互角に戦うというから凄いものです。
そのパッセ補佐官ですが……
大柄で色黒、そして鋭い瞳。まさに絵に描いたような衛兵隊の猛者という感じでした。最初にパッセ補佐官を見た時、「親玉」の登場だと思いましたね。それほどパッセ補佐官の目つきは鋭く、冷たかったのです。
新兵の通過儀礼ということで皿洗いを命じられた時、正直なところ、やられたと思いました。あの様子では、後から嫌がらせに来るだろうと想像できましたから……守るべき相手が人ならともかく、割れやすいお皿、しかも大量ですからね。これは気をつけないとと、内心緊張しましたよ。
でも、パッセ補佐官の取り巻きの皆さんが来られるなら、どうとでもあしらう自信はありましたから、それほど深刻には考えませんでしたけどね。
皿洗いなんて何年ぶりかな……と、食事をしながら考えていましたよ。
私は食事の楽しみを失って大分経ちますが、やはり美味しいものを食べるということは大切なのだなと思います。こういうと変ですけど、やはりどこか口淋しいんです。おかしいものですね。
大陸随一の大国サンテルマインは、とても広い領土を持っています。ナロフから三日も歩けばサンテルマインの領地に入るのですが、城下町に着くまでにさらに二日費やしますからね。
少し、サンテルマイン王国の歴史についてお話します。
当時の国王ファデュス・オリエッティ・サンテルマイン七世をはじめとした歴代の国王は、殊更に領土を広くしようとしたことはありませんでした。街の安全や発展を思う町長たちが、サンテルマインの強固な国力の傘下に組し、その領土に吸収されることを望んだ結果と言われています。
隣の大陸の軍事大国、ゼラン帝国は世界統一を目標として掲げ、破竹の勢いで大陸統一を果たした後、その目標の矛先をサンテルマインに向けました。ゼランの動きを注意深く見守っていたサンテルマインは、その勢いに合わせて自軍の増強を余儀なくされたのです。
かつてはサンテルマイン軍の兵士が城下町や領土の治安維持に当たっていたのですが、ゼランとの戦によって警備が手薄になり、自国の治安が保てなくなることを案じた当時の国王、サンテルマイン四世が、サンテルマイン衛兵隊を新設するよう命じたのでした。
サンテルマイン王国創立とともに誕生したサンテルマイン軍ほどではありませんが、サンテルマイン衛兵隊も数百年の長き歴史を持っているのです。軍よりも厳しい入隊基準によって選抜される衛兵隊員は、街の治安維持だけでなく、必要とあらば軍と同じく前線で戦うことができる、優れた人員によって構成されているのです。
と、いうわけですので……
サンテルマイン衛兵隊に所属になるということは名誉あること。
私は名誉に興味はありませんでしたが、大陸全土の平和に貢献することができる機会を得たことが、何より嬉しかったのです。そこに行くことで私はさらに己を高めることができますし、また双剣術を再び陽のあたる場所で活躍させることができるのですから。
その一方で、それが殺戮の剣であるということを、戦地で実際に試したいという黒々とした思いも少し、持っていましたが……それは内緒です。
私が無試験でサンテルマイン衛兵隊に所属になることを、よく思わぬ方々がいるのは当然のことでした。厳しい試験を潜り抜けた猛者たちにとっては、私はさぞ面白くない存在だったでしょう。双剣術者ということが、それに尚更拍車をかけることは目に見えていました。
だからこそ、私は双剣術を含めた「自分」というものを、惜しげなく披露する義務があると思ったのです。私がどこの馬の骨だか分からないから腹が立つのですから、私がどういう力を持った馬の骨かを知らしめる必要がある、ということですね。
城門のところで私に襲い掛かった連中には、もう少し丁寧に双剣術というものを体験して頂きたかったのですが、ハザムさんを守るのが先決でしたから、その場は手早く片付けるしかありませんでした。
いえ、決してハザムさんが邪魔だったというわけでは……ないのですよ。はい。
クリオ・ノーラン第三中隊長補佐官はそんな衛兵隊の中で、何の偏見も固定観念も持たずに私と接してくれた最初の方でした。栗色の短髪で小柄な方でしたが、全身を鎧のように覆う強靭な筋肉には脱帽させられましたね。筋力を強化する訓練をするのが日課、というか趣味だったそうで、あの小柄な体でも、ワイルダー・パッセ第二中隊長補佐官と互角に戦うというから凄いものです。
そのパッセ補佐官ですが……
大柄で色黒、そして鋭い瞳。まさに絵に描いたような衛兵隊の猛者という感じでした。最初にパッセ補佐官を見た時、「親玉」の登場だと思いましたね。それほどパッセ補佐官の目つきは鋭く、冷たかったのです。
新兵の通過儀礼ということで皿洗いを命じられた時、正直なところ、やられたと思いました。あの様子では、後から嫌がらせに来るだろうと想像できましたから……守るべき相手が人ならともかく、割れやすいお皿、しかも大量ですからね。これは気をつけないとと、内心緊張しましたよ。
でも、パッセ補佐官の取り巻きの皆さんが来られるなら、どうとでもあしらう自信はありましたから、それほど深刻には考えませんでしたけどね。
皿洗いなんて何年ぶりかな……と、食事をしながら考えていましたよ。
私は食事の楽しみを失って大分経ちますが、やはり美味しいものを食べるということは大切なのだなと思います。こういうと変ですけど、やはりどこか口淋しいんです。おかしいものですね。
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