闘神伝記外伝 ~闘神のつぶやき~ 6
2006.05.19 |Category …片隅の小説
この前はすみませんでした、ちょっと情けないところを見せてしまいましたね。
魔界からの邪悪な力はそう頻繁には出てきませんので大丈夫、貴方には危険は及びませんのでご安心下さいね。
先日食事の話をしましたよね。
その後、無性に焼き林檎が食べたくなりまして……
母様がよく作ってくれたんですが、本当に美味しいんですよ。小さい頃から大好物だったんです。サンテルマインの城下町でも美味しい焼き林檎はありましたが、やはり母様の味にはかないませんね。
はい、お察しの通り、私は甘党です。ははは。
魔界からの邪悪な力はそう頻繁には出てきませんので大丈夫、貴方には危険は及びませんのでご安心下さいね。
先日食事の話をしましたよね。
その後、無性に焼き林檎が食べたくなりまして……
母様がよく作ってくれたんですが、本当に美味しいんですよ。小さい頃から大好物だったんです。サンテルマインの城下町でも美味しい焼き林檎はありましたが、やはり母様の味にはかないませんね。
はい、お察しの通り、私は甘党です。ははは。
▽一応続いてますぜ。
・第六話「皿洗いのトキーエ」
修行に出る前、私は家事は一切しませんでした。女の仕事を男がするものではないという、ギアムデン家の暗黙のきまりがあったのです。
しかし、修行に出てエダル師のもとへ行き一番最初にやらされたのは、他ならぬ家事全般でした。当たり前ですよね、師の世話をするのは弟子の役目ですから。だから最初のうちは、慣れぬ家事に追われて修行どころではなく、とても苦労したのを覚えています。やっとまともな食事を作れるようになって初めて、師に「美味しい」と褒められた時、思わず天を仰いでしまったほど嬉しかったものですよ。一年間、一日も休まず家事全般を切り盛りしたのですから、嫌でも腕は上がりますよね。
修行を終えてナロフに帰ってからも、私は時々母様とともに台所に立ち、料理をしたものです。エダル師直伝のシチューを作って家族に振舞った時は、みんな絶賛してくれましたね。
家事は得意、というのはそういう理由だったのです。量は多くてもやることは同じですから、後片付けや皿洗いは難なくこなすことができました。案の定妨害が入りましたけど、それもまた取るに足らぬことです。
しかしあの時、私の余裕はあっても時間の余裕はありませんでしたので、少し手荒に対処させていただきました。皆さんは私を見ると、剣術以外は弱いだろうと先に判断してしまうようですが、それは私の「思うつぼ」ですね。
力押しする剛の体術が主であった当時、私は柔の体術をエダル師に叩き込まれていました。相手の勢いを利用し最小限の力で勝負を決める術を、徹底的に仕込まれたのです。なので、体術はこう見えても得意なのですよ、ふふふ。
そうしてひと仕事、いえ、ふた仕事ですか。終えた後にいただいた美味しいお茶は、格別でした。食事係の皆さんとも仲良くなれましたしね。あれから時々、私の夕食にだけちょっとしたおまけを付けてくれたりしましたよ。
皿洗いの翌日、パッセ補佐官は私に言いました。部下に怪我をさせなかったことに感謝する、と。それを聞いたとき、やはりこの方は違うと思いましたね。
部下がやられれば腹が立つはず、仕返ししようと躍起になってもいいはずなのに、パッセ補佐官はそれを押しとどめ、両者が傷つかぬ選択をしてくれたのです。
とはいえ、双剣術を異端の剣術と呼ぶ彼にとって、私はやはり邪魔な存在。その冷たい瞳が融け始めるのは、まだまだ先のことです。
修行に出る前、私は家事は一切しませんでした。女の仕事を男がするものではないという、ギアムデン家の暗黙のきまりがあったのです。
しかし、修行に出てエダル師のもとへ行き一番最初にやらされたのは、他ならぬ家事全般でした。当たり前ですよね、師の世話をするのは弟子の役目ですから。だから最初のうちは、慣れぬ家事に追われて修行どころではなく、とても苦労したのを覚えています。やっとまともな食事を作れるようになって初めて、師に「美味しい」と褒められた時、思わず天を仰いでしまったほど嬉しかったものですよ。一年間、一日も休まず家事全般を切り盛りしたのですから、嫌でも腕は上がりますよね。
修行を終えてナロフに帰ってからも、私は時々母様とともに台所に立ち、料理をしたものです。エダル師直伝のシチューを作って家族に振舞った時は、みんな絶賛してくれましたね。
家事は得意、というのはそういう理由だったのです。量は多くてもやることは同じですから、後片付けや皿洗いは難なくこなすことができました。案の定妨害が入りましたけど、それもまた取るに足らぬことです。
しかしあの時、私の余裕はあっても時間の余裕はありませんでしたので、少し手荒に対処させていただきました。皆さんは私を見ると、剣術以外は弱いだろうと先に判断してしまうようですが、それは私の「思うつぼ」ですね。
力押しする剛の体術が主であった当時、私は柔の体術をエダル師に叩き込まれていました。相手の勢いを利用し最小限の力で勝負を決める術を、徹底的に仕込まれたのです。なので、体術はこう見えても得意なのですよ、ふふふ。
そうしてひと仕事、いえ、ふた仕事ですか。終えた後にいただいた美味しいお茶は、格別でした。食事係の皆さんとも仲良くなれましたしね。あれから時々、私の夕食にだけちょっとしたおまけを付けてくれたりしましたよ。
皿洗いの翌日、パッセ補佐官は私に言いました。部下に怪我をさせなかったことに感謝する、と。それを聞いたとき、やはりこの方は違うと思いましたね。
部下がやられれば腹が立つはず、仕返ししようと躍起になってもいいはずなのに、パッセ補佐官はそれを押しとどめ、両者が傷つかぬ選択をしてくれたのです。
とはいえ、双剣術を異端の剣術と呼ぶ彼にとって、私はやはり邪魔な存在。その冷たい瞳が融け始めるのは、まだまだ先のことです。
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