闘神伝記外伝 ~闘神のつぶやき~ 3
2006.05.16 |Category …片隅の小説
この前の音は教会の鐘の音かと思ったのですが、どうも違うようですね。あれからずっと、遠くで静かに鳴り続けているように感じます……よからぬことの前兆でないといいのですが。
こうしてここにいると、次々と昔のことが思い浮かんできて、今更ながらとても懐かしいんです。
……過去を振り返るなんて、私も年でしょうか。
姿は二十歳前後ですが、実際にはもう数百年の間現世を彷徨っていますからね。ははは。
こうしてここにいると、次々と昔のことが思い浮かんできて、今更ながらとても懐かしいんです。
……過去を振り返るなんて、私も年でしょうか。
姿は二十歳前後ですが、実際にはもう数百年の間現世を彷徨っていますからね。ははは。
▽一応続いてますぜ。
・第三話「ナロフ警備隊」
私よりも二つ年上のフェローは、警備隊に所属した当初、よく私に愚痴をこぼしにきましたよ。仕事に誇りを持てても、先輩や上司に敬うべき者は少ない、とね。理想と現実の格差に苦しみ、心のうちを吐き出す場所が欲しかったのでしょう。お父上が当時警備隊長でしたから、なおさらだったのかもしれません。
だから私が警備隊に入ってすぐの頃、彼は私をとてもよく面倒見てくれました。特に、聞こえよがしに私を蔑む先輩たちとの口げんかはしょっちゅうでしたね。言いたい奴には言わせておけばいいと、何度もフェローに言ったのですが、そういう連中には我慢ならんということで……剣の勝負は冷静なのに、それ以外となると彼は本当に短気でした。
まあ、そこがフェローのいいところでもあるのですが。
私は警備隊に入って、剣術以外のことを学んだつもりです。
仕事云々ではなく、世間には様々な者がいるということ、色々な付き合い方があるということ、そして……
……こう言うと語弊があるかもしれませんが、双剣術の敵対者への対応を学んだのです。
私が警備隊に入って最初に行われた武術大会の体術部門で、ゴーシュ先輩と対戦しましたが、あれはその意味ではとても意義のある戦いでした。
「愚か者の剣術」がどれほどの力を持つのか、その目の前で披露すること。そしてそれを扱う継承者である私を知ってもらうこと。それが双剣術を敵視する方々への「言葉」だということを理解したのです。
自分の腕に自信のある者は、それ以上の力を見せ付けられると一気に闘争心が萎縮します。自尊心を傷つけられた上に怪我までするのはゴメンだと、我知らず気後れしてしまうのですよ。
ちなみにゴーシュ先輩はその後、私のよき先輩になって下さいましたよ、ふふふ。
その大会の最中、祖父が亡くなったのは残念でした……悪い血の病に侵されて、その半年も前から病床に伏せていましたから、よくそれまで耐えたと思います。最期まで私の味方であり続けていてくれた祖父には、本当に感謝しています。
あの時フェローと酌み交わした果実酒は、胸に沁みるように苦かった。今もあの味が忘れられませんよ……フェローのちょっと下手な慰めもまた、忘れられない思い出です。
友とは、本当にありがたいものですね。
それにしても今頃、祖父も父も私に腹を立てているでしょうね。
亡者の分際で冥府に落ち着かず飛び歩いてばかりとは……ってね。
私よりも二つ年上のフェローは、警備隊に所属した当初、よく私に愚痴をこぼしにきましたよ。仕事に誇りを持てても、先輩や上司に敬うべき者は少ない、とね。理想と現実の格差に苦しみ、心のうちを吐き出す場所が欲しかったのでしょう。お父上が当時警備隊長でしたから、なおさらだったのかもしれません。
だから私が警備隊に入ってすぐの頃、彼は私をとてもよく面倒見てくれました。特に、聞こえよがしに私を蔑む先輩たちとの口げんかはしょっちゅうでしたね。言いたい奴には言わせておけばいいと、何度もフェローに言ったのですが、そういう連中には我慢ならんということで……剣の勝負は冷静なのに、それ以外となると彼は本当に短気でした。
まあ、そこがフェローのいいところでもあるのですが。
私は警備隊に入って、剣術以外のことを学んだつもりです。
仕事云々ではなく、世間には様々な者がいるということ、色々な付き合い方があるということ、そして……
……こう言うと語弊があるかもしれませんが、双剣術の敵対者への対応を学んだのです。
私が警備隊に入って最初に行われた武術大会の体術部門で、ゴーシュ先輩と対戦しましたが、あれはその意味ではとても意義のある戦いでした。
「愚か者の剣術」がどれほどの力を持つのか、その目の前で披露すること。そしてそれを扱う継承者である私を知ってもらうこと。それが双剣術を敵視する方々への「言葉」だということを理解したのです。
自分の腕に自信のある者は、それ以上の力を見せ付けられると一気に闘争心が萎縮します。自尊心を傷つけられた上に怪我までするのはゴメンだと、我知らず気後れしてしまうのですよ。
ちなみにゴーシュ先輩はその後、私のよき先輩になって下さいましたよ、ふふふ。
その大会の最中、祖父が亡くなったのは残念でした……悪い血の病に侵されて、その半年も前から病床に伏せていましたから、よくそれまで耐えたと思います。最期まで私の味方であり続けていてくれた祖父には、本当に感謝しています。
あの時フェローと酌み交わした果実酒は、胸に沁みるように苦かった。今もあの味が忘れられませんよ……フェローのちょっと下手な慰めもまた、忘れられない思い出です。
友とは、本当にありがたいものですね。
それにしても今頃、祖父も父も私に腹を立てているでしょうね。
亡者の分際で冥府に落ち着かず飛び歩いてばかりとは……ってね。
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