闘神伝記外伝 ~闘神のつぶやき~ 2
2006.05.15 |Category …片隅の小説
命ある時期を駆け抜けて二十八年、死して彷徨った数百年……
その長い年月の中で、ひょっとしたら今のこの時がいちばん、平穏なのかもしれません。私がこうしてここにいる限り、魔界からの侵略はないのですからね。
また来て下さったのですね……ありがとう。
私は元々、あまりお喋りが得意な方ではないのですが、独りの時間が長すぎるとちょっと持て余しますから……耳障りでなかったら、また少しだけお付き合いいただけますか?
その長い年月の中で、ひょっとしたら今のこの時がいちばん、平穏なのかもしれません。私がこうしてここにいる限り、魔界からの侵略はないのですからね。
また来て下さったのですね……ありがとう。
私は元々、あまりお喋りが得意な方ではないのですが、独りの時間が長すぎるとちょっと持て余しますから……耳障りでなかったら、また少しだけお付き合いいただけますか?
▽一応続いてますぜ。
・第二話「二人の天才」
修行の旅に出て一月もせぬうちに、エダル師にお会いしたのは私の運命だったのでしょう。
その時のエダル師の雄姿は本当に衝撃的でした。二振りの剣が、たった独りに操られながらまったく別の動きをしているのです。まるで体を共有した二人の人間が戦っているかのような錯覚すら覚えました。
双剣術の苦難の歴史については私も知っていました。剣士の端くれとして、様々な剣術や流派の勉強をしていましたからね。
だけど、双剣術の使い手エダル師に出会ったその時、私が抱いていた思いが、いい意味でひび割れるのを感じたんですよ。
戦の終焉を導くべく生み出された殺戮の剣、一撃必殺の力を持つ剣……その継承者の心、信念に触れ、どれほどに蔑まれても胸の内で輝き続ける剣への誇りを見て……私は柄にもなく感動し、興奮したんです。
私はそれまで、修練を積めば強くなれると思っていました。
しかし、それだけでは強くなれないことにその時、気づいたんです。剣を扱う上での気構えや誇りが、私には足りなかったんです。
だから、私は何の迷いもなく双剣術を志すことを決めたんですよ。
実はその時……父や祖父のことは、すっかり忘れていました。
あれほど厳しく鍛えられた伝統的な剣術を捨てようとしていることに、後ろめたさがなかったわけではありません。でもたとえ母や姉たちに泣きつかれていても、私の信念は変わらなかったでしょう。
修行を終えてナロフに戻ってからですが、やはり友達の反応はすごかったですね。冷やかし、中傷、嫌がらせなどありましたが、それをいちいち説明するのはやめましょうね。
悪戯心で私に勝負を申し込む輩も日に二・三人はいましたが、彼らの名誉のためにも、私はそうした勝負を受けたくありませんでした。私は父を相手に、ものの数分で勝負を決めたのです。彼ら相手では一分も持たずに勝負がついてしまったでしょう、それではさすがに彼らが傷つくでしょうからね……
ただ、フェローは違いました。
少々乱暴な勝負の申し込みでしたが、彼の挑戦なら私も受けようと思っていたところです。何せ彼はナロフ一の少年剣士と言われていましたからね、彼とだったらまともな勝負になる、そう思ったんです。
結果、私が勝利したわけですが……
後からフェローに聞いたんですけど、実はその日の夜、彼は自室でひどく落ち込んだそうですよ。私に投げかけた言葉や自分の行いを恥じる気持ちと、それよりも大きな敗北の屈辱感に、朝まで眠れなかったそうです。
……分かります。
一対一の勝負には、勝つ者と負ける者しか存在しない。それが剣の世界に生きる我々のさだめ。
負けたときの悔しさ、その気持ちは大切なものです。その悔しさを踏み台にして、強くなるために努力し続けるのですからね。
私も、またフェローも、多くのことを学んだのです。
特に私は、彼から「友情」というものの大切さを学びましたよ。
ん?
今何か聞こえませんでしたか?
……気のせいでしょうか。でもちょうどいい区切りですね、この辺でおしまいにしておきましょう。
お付き合いありがとう……またいつでも来てくださいね。
修行の旅に出て一月もせぬうちに、エダル師にお会いしたのは私の運命だったのでしょう。
その時のエダル師の雄姿は本当に衝撃的でした。二振りの剣が、たった独りに操られながらまったく別の動きをしているのです。まるで体を共有した二人の人間が戦っているかのような錯覚すら覚えました。
双剣術の苦難の歴史については私も知っていました。剣士の端くれとして、様々な剣術や流派の勉強をしていましたからね。
だけど、双剣術の使い手エダル師に出会ったその時、私が抱いていた思いが、いい意味でひび割れるのを感じたんですよ。
戦の終焉を導くべく生み出された殺戮の剣、一撃必殺の力を持つ剣……その継承者の心、信念に触れ、どれほどに蔑まれても胸の内で輝き続ける剣への誇りを見て……私は柄にもなく感動し、興奮したんです。
私はそれまで、修練を積めば強くなれると思っていました。
しかし、それだけでは強くなれないことにその時、気づいたんです。剣を扱う上での気構えや誇りが、私には足りなかったんです。
だから、私は何の迷いもなく双剣術を志すことを決めたんですよ。
実はその時……父や祖父のことは、すっかり忘れていました。
あれほど厳しく鍛えられた伝統的な剣術を捨てようとしていることに、後ろめたさがなかったわけではありません。でもたとえ母や姉たちに泣きつかれていても、私の信念は変わらなかったでしょう。
修行を終えてナロフに戻ってからですが、やはり友達の反応はすごかったですね。冷やかし、中傷、嫌がらせなどありましたが、それをいちいち説明するのはやめましょうね。
悪戯心で私に勝負を申し込む輩も日に二・三人はいましたが、彼らの名誉のためにも、私はそうした勝負を受けたくありませんでした。私は父を相手に、ものの数分で勝負を決めたのです。彼ら相手では一分も持たずに勝負がついてしまったでしょう、それではさすがに彼らが傷つくでしょうからね……
ただ、フェローは違いました。
少々乱暴な勝負の申し込みでしたが、彼の挑戦なら私も受けようと思っていたところです。何せ彼はナロフ一の少年剣士と言われていましたからね、彼とだったらまともな勝負になる、そう思ったんです。
結果、私が勝利したわけですが……
後からフェローに聞いたんですけど、実はその日の夜、彼は自室でひどく落ち込んだそうですよ。私に投げかけた言葉や自分の行いを恥じる気持ちと、それよりも大きな敗北の屈辱感に、朝まで眠れなかったそうです。
……分かります。
一対一の勝負には、勝つ者と負ける者しか存在しない。それが剣の世界に生きる我々のさだめ。
負けたときの悔しさ、その気持ちは大切なものです。その悔しさを踏み台にして、強くなるために努力し続けるのですからね。
私も、またフェローも、多くのことを学んだのです。
特に私は、彼から「友情」というものの大切さを学びましたよ。
ん?
今何か聞こえませんでしたか?
……気のせいでしょうか。でもちょうどいい区切りですね、この辺でおしまいにしておきましょう。
お付き合いありがとう……またいつでも来てくださいね。
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