闘神伝記外伝 ~闘神のつぶやき~ 1
2006.05.14 |Category …片隅の小説
静かですね……
暗闇の中こうして佇むようになって、もうどれくらい経ったでしょうか。
いえ、時間の経過は私には意味のないことでした。私はもう、亡者ですからね。
ジギダ殿は今頃、どうされているでしょうか。
偉大なる魔術師シェルストーンの力となり、また未来ある若者の力となった結果としてこの暗闇があるのなら、私は己のさだめを静かに受け止めたいと思うのです。
ところで……
魔界の扉を塞ぐため魂の鍵となった私のことを、貴方は見えているご様子ですね。私からは何も見えませんが、気配だけは分かりますよ。
独りきりというのも味気ないものですし、少しだけお付き合い願えませんか。
ああ、申し遅れました、私の名はトキーエ。
最期の双剣術者、トキーエ・ギアムデンです。
暗闇の中こうして佇むようになって、もうどれくらい経ったでしょうか。
いえ、時間の経過は私には意味のないことでした。私はもう、亡者ですからね。
ジギダ殿は今頃、どうされているでしょうか。
偉大なる魔術師シェルストーンの力となり、また未来ある若者の力となった結果としてこの暗闇があるのなら、私は己のさだめを静かに受け止めたいと思うのです。
ところで……
魔界の扉を塞ぐため魂の鍵となった私のことを、貴方は見えているご様子ですね。私からは何も見えませんが、気配だけは分かりますよ。
独りきりというのも味気ないものですし、少しだけお付き合い願えませんか。
ああ、申し遅れました、私の名はトキーエ。
最期の双剣術者、トキーエ・ギアムデンです。
▽一応続いてますぜ。
・第一話「愚か者の剣術」
私が初めて本物の剣を取ったのは、四歳のことだと母から聞きました。
剣士である父と祖父は私が生まれる前から、もう私の将来について懇々と話し合っていたといいます。私の幼少時、早くから子供用の木剣を持たせていたそうですが、母の留守中、父は真剣を私に握らせました。その重さに驚き、私がよろめいたところで、ちょうど母が帰宅しましてね。
ええ、普段は亭主関白の父が、母にこっぴどく叱られたそうですよ。
私ですか?
物心付く前から、すでにもう剣の修練らしきことをやらされていたので、剣士の道を進むことに抵抗はありませんでした。母や二人の姉は、厳しい修練を課される私がかわいそうだと、度々父や祖父に苦言を呈していたようですが、私は別に苦ではなかったんです。
剣の打ち合いで、父に剣を弾かれた時。
祖父の指示通りの立会いができなかった時。
……私はこう見えても、結構な負けず嫌いでしてね。
悔しくて悔しくて、夜中に部屋を抜け出して、泣きながら森中の木に木剣を振るい続けたこともありますよ。だから、修練を積んでもっともっと強くなりたかったんです。
父や祖父を、越えるためにね。
後でちゃんと説明しますが、私が双剣術を志したのは、私が求める「強さ」というものの答えが、そこに凝縮されているような気がしたからです。
しかし当時の呼び名は「愚か者の剣術」ですから……一年の修行を終えて家に戻った時の、父や祖父の驚愕の表情は今も覚えていますよ。想像以上でした、ははは。
そしてまた、双剣術の威力も、想像以上だったのです。
父と打ち合って、あれほど簡単に決着が付くとは私も予想していなかったんですから。私はその一瞬に父を越え、己が得た「強さ」の真実に、体の芯が打ち震えるのを感じました……
ああ、長くなりましたね、失礼。次の話はまたの機会に。
……私にはたくさん、時間がありますので……
私が初めて本物の剣を取ったのは、四歳のことだと母から聞きました。
剣士である父と祖父は私が生まれる前から、もう私の将来について懇々と話し合っていたといいます。私の幼少時、早くから子供用の木剣を持たせていたそうですが、母の留守中、父は真剣を私に握らせました。その重さに驚き、私がよろめいたところで、ちょうど母が帰宅しましてね。
ええ、普段は亭主関白の父が、母にこっぴどく叱られたそうですよ。
私ですか?
物心付く前から、すでにもう剣の修練らしきことをやらされていたので、剣士の道を進むことに抵抗はありませんでした。母や二人の姉は、厳しい修練を課される私がかわいそうだと、度々父や祖父に苦言を呈していたようですが、私は別に苦ではなかったんです。
剣の打ち合いで、父に剣を弾かれた時。
祖父の指示通りの立会いができなかった時。
……私はこう見えても、結構な負けず嫌いでしてね。
悔しくて悔しくて、夜中に部屋を抜け出して、泣きながら森中の木に木剣を振るい続けたこともありますよ。だから、修練を積んでもっともっと強くなりたかったんです。
父や祖父を、越えるためにね。
後でちゃんと説明しますが、私が双剣術を志したのは、私が求める「強さ」というものの答えが、そこに凝縮されているような気がしたからです。
しかし当時の呼び名は「愚か者の剣術」ですから……一年の修行を終えて家に戻った時の、父や祖父の驚愕の表情は今も覚えていますよ。想像以上でした、ははは。
そしてまた、双剣術の威力も、想像以上だったのです。
父と打ち合って、あれほど簡単に決着が付くとは私も予想していなかったんですから。私はその一瞬に父を越え、己が得た「強さ」の真実に、体の芯が打ち震えるのを感じました……
ああ、長くなりましたね、失礼。次の話はまたの機会に。
……私にはたくさん、時間がありますので……
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