闘神伝記外伝 ~闘神のつぶやき~ 11
2006.06.06 |Category …片隅の小説
こんにちは、ようこそ。
聞こえますか?
あの静かな音が次第にはっきりと聞こえてきました。順調に近付いてきているみたいですね。
でも、あの音がたどり着くまで、私が存在し得るかどうか……
貴方が来る前に、また魔界側からの攻撃があったのです。内側から魔界の扉を押し破ろうとする邪悪な力は、徐々に強さを増しつつあるようです。あそこまで執拗に人界へ出ようとするのには、何か理由があるのでしょう……胸騒ぎがします。
私の魂の力が、少しでも長く保てますように。
聞こえますか?
あの静かな音が次第にはっきりと聞こえてきました。順調に近付いてきているみたいですね。
でも、あの音がたどり着くまで、私が存在し得るかどうか……
貴方が来る前に、また魔界側からの攻撃があったのです。内側から魔界の扉を押し破ろうとする邪悪な力は、徐々に強さを増しつつあるようです。あそこまで執拗に人界へ出ようとするのには、何か理由があるのでしょう……胸騒ぎがします。
私の魂の力が、少しでも長く保てますように。
▽一応続いてますぜ
第11話「バートラスタ攻略 調停人」
ファーマレイの家があるバートラスタ港付近の地域は、比較的裕福な家が集まる場所だということはお話しましたね。中でも南地区は商人が多く住む場所なので、豪華な造りの屋敷が集中しています。白い壁に美しい青い貝殻を埋め込んだり、塀の格子に磨かれた獣の角をあしらったりと、それぞれの故郷がしのばれる装飾がなされています。
そんなお屋敷群の中でも飛びぬけて豪華な屋敷が、アルベルト・シューデリ氏の屋敷でした。彼は五隻もの船を所有する大商人で、様々な国に滞在用の屋敷を置くほどの大富豪です。シューデリ氏のお屋敷に入った時は、まるで王様の宝物庫にいるような気分でしたよ。
そんな大富豪のシューデリ氏が、なぜ初対面の私ごときと会って下さったか、不思議ではありませんか?双剣術者というだけで会えるような方ではないのですけど、それにはちゃんと理由があるのです。
ああいう商人の家には、様々な仕掛けがなされています。ファーマレイの家を見つけた時、パッセ補佐官が扉の覗き窓を押し開こうとしたら、いきなり針が飛び出てきましたよね。ああいった防御策を何重にも施してありますから、ならず者の一人や二人を家に招きいれて万一のことがあっても、別段困ることはないのです。
それに、彼らは他の国からの来訪者は、どんな客でも一応歓迎するのですよ。バートラスタ以外の話を聞いて、それを商売に繋げようというたくましい商魂ですね。またそれ以外に、来訪者をわざと捕らえて責め苛む、異常な趣味を持つ者がいるという噂もあります。普通の娯楽に飽きてしまった彼らのような裕福な者たちは、奴隷を嬲り者にする行為を好む場合があるのです。
幸いシューデリ氏は、そういう類の趣味は持ち合わせていない様子でしたので、ほっとしましたけどね。
悪辣な商人たちの中にいて、その頭角を現したシューデリ氏の最大の武器は、聡明な知恵だと聞いています。裏の裏のそのまた裏を読み、常に商売敵の先を行く見事な戦法で、商売人としての地位を不動のものにしたのだそうですよ。
だから私の「取引」の申し出は、シューデリ氏には願ってもない機会だったはずです。新しき主とは古き主を蹴落とした者……明解な図式ですよね。ただいきなりの話でしたから、彼もそれを理解するのにちょっと苦労した様子でしたけどね。
今だから言えるのですが、シューデリ氏が承諾して下さって本当に助かりました。「私が主になるしかない」と大見得を切ったものの、その後のことは考えていませんでしたから。商売のことは分かりませんし、主の座にも興味はありませんし……今思うと、相当無謀な台詞を言ったなあと思いますね……ははは。
その頃二人の補佐官は、ハトリック氏のアトリエで絵を見ていたそうですね。
私もあの後、自分の肖像画を見せていただいたのですが、嬉しい反面、何だか照れくさかったです。それにしても、どこで見られていたのでしょうか……あの当時は毎日修行に明け暮れていて、周囲を見る余裕がありませんでしたから、まったく気づきませんでした。
教えて下されば、ご挨拶くらいはしたのですけど……
ファーマレイの家があるバートラスタ港付近の地域は、比較的裕福な家が集まる場所だということはお話しましたね。中でも南地区は商人が多く住む場所なので、豪華な造りの屋敷が集中しています。白い壁に美しい青い貝殻を埋め込んだり、塀の格子に磨かれた獣の角をあしらったりと、それぞれの故郷がしのばれる装飾がなされています。
そんなお屋敷群の中でも飛びぬけて豪華な屋敷が、アルベルト・シューデリ氏の屋敷でした。彼は五隻もの船を所有する大商人で、様々な国に滞在用の屋敷を置くほどの大富豪です。シューデリ氏のお屋敷に入った時は、まるで王様の宝物庫にいるような気分でしたよ。
そんな大富豪のシューデリ氏が、なぜ初対面の私ごときと会って下さったか、不思議ではありませんか?双剣術者というだけで会えるような方ではないのですけど、それにはちゃんと理由があるのです。
ああいう商人の家には、様々な仕掛けがなされています。ファーマレイの家を見つけた時、パッセ補佐官が扉の覗き窓を押し開こうとしたら、いきなり針が飛び出てきましたよね。ああいった防御策を何重にも施してありますから、ならず者の一人や二人を家に招きいれて万一のことがあっても、別段困ることはないのです。
それに、彼らは他の国からの来訪者は、どんな客でも一応歓迎するのですよ。バートラスタ以外の話を聞いて、それを商売に繋げようというたくましい商魂ですね。またそれ以外に、来訪者をわざと捕らえて責め苛む、異常な趣味を持つ者がいるという噂もあります。普通の娯楽に飽きてしまった彼らのような裕福な者たちは、奴隷を嬲り者にする行為を好む場合があるのです。
幸いシューデリ氏は、そういう類の趣味は持ち合わせていない様子でしたので、ほっとしましたけどね。
悪辣な商人たちの中にいて、その頭角を現したシューデリ氏の最大の武器は、聡明な知恵だと聞いています。裏の裏のそのまた裏を読み、常に商売敵の先を行く見事な戦法で、商売人としての地位を不動のものにしたのだそうですよ。
だから私の「取引」の申し出は、シューデリ氏には願ってもない機会だったはずです。新しき主とは古き主を蹴落とした者……明解な図式ですよね。ただいきなりの話でしたから、彼もそれを理解するのにちょっと苦労した様子でしたけどね。
今だから言えるのですが、シューデリ氏が承諾して下さって本当に助かりました。「私が主になるしかない」と大見得を切ったものの、その後のことは考えていませんでしたから。商売のことは分かりませんし、主の座にも興味はありませんし……今思うと、相当無謀な台詞を言ったなあと思いますね……ははは。
その頃二人の補佐官は、ハトリック氏のアトリエで絵を見ていたそうですね。
私もあの後、自分の肖像画を見せていただいたのですが、嬉しい反面、何だか照れくさかったです。それにしても、どこで見られていたのでしょうか……あの当時は毎日修行に明け暮れていて、周囲を見る余裕がありませんでしたから、まったく気づきませんでした。
教えて下されば、ご挨拶くらいはしたのですけど……
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