闘神伝記外伝 ~闘神のつぶやき~ 12
2006.06.20 |Category …片隅の小説
ようこそ、また来て下さったのですね、お待ちしていました。
いつも私が一方的に話してばかりで申し訳ないとは思うのですが、あなたの姿や声は聞こえませんし……いつか別の世界で出会うことがありましたら、その時は私が、あなたのお話をじっくりとお聞きしますね。
かすかだったあの音は、次第にはっきりと聞こえるようになってきましたよ。
聞こえますか?
……おそらく、つるはしで岩を砕く音だと思うのです。
規則正しいこの音から察するに、人の仕業ではないように思うのですが……どうでしょうね。
ここにたどり着いてくれるのを、楽しみに待つことにしましょう。
いつも私が一方的に話してばかりで申し訳ないとは思うのですが、あなたの姿や声は聞こえませんし……いつか別の世界で出会うことがありましたら、その時は私が、あなたのお話をじっくりとお聞きしますね。
かすかだったあの音は、次第にはっきりと聞こえるようになってきましたよ。
聞こえますか?
……おそらく、つるはしで岩を砕く音だと思うのです。
規則正しいこの音から察するに、人の仕業ではないように思うのですが……どうでしょうね。
ここにたどり着いてくれるのを、楽しみに待つことにしましょう。
▽一応続いてますぜ
第12話 「バートラスタ攻略 ロンバルティの屋敷」
口の不自由な少年に案内されて、ロンバルティの屋敷に向かった私を出迎えたのは、黒髪の女性剣士ジャスリーでした。
一対一の対決ですからお互い剣を手に向き合いましたが、彼女の持っていたショーテルという剣はその形状がとても特殊です。盾を持つ相手の内側に入り込めるよう半円形をした細身の刀身は、手首の返し方一つで様々な方向に攻撃することができます。扱いづらい剣なのですが、彼女はそれを上手に操っていましたね。
でもその剣の最大の弱点は、軽く折れやすいということです。私が持つようなしっかりとした中剣の刃に挟みこまれたら、その細く長い刀身はひとたまりもありません。彼女は自身の腕を過信し、剣の弱点を補う術を持たなかったのですね。
その点、ジャスリーの兄ジャラフは、黒い長剣を巧みに操る剣豪でした。踏み込みの素早さ、太刀筋の切れには、私も内心驚きましたよ。
でもそうした剣の手練れによくあることなのですが、剣に意識を集中するあまり他のものが一瞬見えなくなるのです。不意に体術へ移行されると対処できないことが多くて、だからあの時、私の足払いをかわせなかったんだと思います。
それにしても、ジャナッタが使う不思議な力が「呪術」の気配だと、なぜ気づいたと思いますか?
当時、魔術という存在はまだまだ広く認知されておらず、また魔術師そのものも数が少なかったので、街中で彼らを見つけることなどまずあり得ませんでした。
一方呪術は呪いや薬、道具によってなせる業ですから、それを持って念ずるだけで不思議な効果が得られます。私がジャラフと戦っている最中に気づいたのは、その「念」ですね。
邪な企みのために念を高めるわけですから、当然「気」は普通以上に乱れます。双剣術者はあらゆる方向にある敵を察知すべく「気」を読む修行をしますから、ジャナッタが放つ気は簡単に読むことができました。
精神に作用する呪術は、それ以上に強い集中力によって遮断できます。ジャナッタの呪術にかかったようにお芝居をしたのはとっさの賭けでしたけど、見事に引っかかってくれましたね……ジャスリーと同じく、自分に過信があったのでしょう。
あまりにも簡単に騙されてくれたので、逆に私が騙されているのではないかと勘繰りたくなりましたよ。
余談ですが、ジャナッタが使っていた呪いの首飾りは、南の海にあるトロッセ諸島の鎮魂師から買い付けたものだそうです。鎮魂師とは本来、海や風の精霊たちに供物を捧げ、迷える死者の魂を冥府へ連れ帰ってもらう儀式を行う、とても神聖な存在と言われています。人の意識を操る呪いの道具は、大切な人を亡くして哀しみにくれる島民を眠りに誘い、その辛さと哀しみを和らげるために使われているもの。
それを、商売敵を排除し私腹を肥やすために使うとは、悪党にもほどがあります。
だからこそ、一切容赦しなかったのですけどね。
口の不自由な少年に案内されて、ロンバルティの屋敷に向かった私を出迎えたのは、黒髪の女性剣士ジャスリーでした。
一対一の対決ですからお互い剣を手に向き合いましたが、彼女の持っていたショーテルという剣はその形状がとても特殊です。盾を持つ相手の内側に入り込めるよう半円形をした細身の刀身は、手首の返し方一つで様々な方向に攻撃することができます。扱いづらい剣なのですが、彼女はそれを上手に操っていましたね。
でもその剣の最大の弱点は、軽く折れやすいということです。私が持つようなしっかりとした中剣の刃に挟みこまれたら、その細く長い刀身はひとたまりもありません。彼女は自身の腕を過信し、剣の弱点を補う術を持たなかったのですね。
その点、ジャスリーの兄ジャラフは、黒い長剣を巧みに操る剣豪でした。踏み込みの素早さ、太刀筋の切れには、私も内心驚きましたよ。
でもそうした剣の手練れによくあることなのですが、剣に意識を集中するあまり他のものが一瞬見えなくなるのです。不意に体術へ移行されると対処できないことが多くて、だからあの時、私の足払いをかわせなかったんだと思います。
それにしても、ジャナッタが使う不思議な力が「呪術」の気配だと、なぜ気づいたと思いますか?
当時、魔術という存在はまだまだ広く認知されておらず、また魔術師そのものも数が少なかったので、街中で彼らを見つけることなどまずあり得ませんでした。
一方呪術は呪いや薬、道具によってなせる業ですから、それを持って念ずるだけで不思議な効果が得られます。私がジャラフと戦っている最中に気づいたのは、その「念」ですね。
邪な企みのために念を高めるわけですから、当然「気」は普通以上に乱れます。双剣術者はあらゆる方向にある敵を察知すべく「気」を読む修行をしますから、ジャナッタが放つ気は簡単に読むことができました。
精神に作用する呪術は、それ以上に強い集中力によって遮断できます。ジャナッタの呪術にかかったようにお芝居をしたのはとっさの賭けでしたけど、見事に引っかかってくれましたね……ジャスリーと同じく、自分に過信があったのでしょう。
あまりにも簡単に騙されてくれたので、逆に私が騙されているのではないかと勘繰りたくなりましたよ。
余談ですが、ジャナッタが使っていた呪いの首飾りは、南の海にあるトロッセ諸島の鎮魂師から買い付けたものだそうです。鎮魂師とは本来、海や風の精霊たちに供物を捧げ、迷える死者の魂を冥府へ連れ帰ってもらう儀式を行う、とても神聖な存在と言われています。人の意識を操る呪いの道具は、大切な人を亡くして哀しみにくれる島民を眠りに誘い、その辛さと哀しみを和らげるために使われているもの。
それを、商売敵を排除し私腹を肥やすために使うとは、悪党にもほどがあります。
だからこそ、一切容赦しなかったのですけどね。
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